3G house
香取の三世代住居
用途:専用住宅
構造・規模:木造 地上2階
家族構成:親世代(2人)+子世代(2人)+孫世代(2人)
所在地:千葉県香取市
敷地面積:350.33㎡
延床面積:182.93㎡
竣工年月:2020年8月
設計:千田建築
担当:千田藍, 千田友己
構造設計:坂田涼太郎構造設計事務所
施工:広橋工務店
撮影:千田建築
Main use:Private Housing
Structure:Wooden structure, 2 floor
Client:Parent generation(couple), Child generation(couple), Grandchild generation(brother, sister)
Location:Katori, Chiba prefecture
Site area:350.33㎡
Total floor area:182.93㎡
Completion:August, 2020
Design:Chida Architecture Associates
Architects:Ai Chida, Yuki Chida
Structure design:Ryotaro Sakata Structural Engineers
Construction:Hirohashi Koumuten
Photo:Yuki Chida
都市近郊農村の新しい屋敷景観へ向けて
敷地は千葉県香取市 、古い町並みの残る佐原に程近い 利根川の河川敷に面した農地集落の一角で 、三世代続 く農家の建て替え計画である 。築70年を超える木造 平屋建の母屋を中心に 、一層の米倉 、二層鉄骨造のは なれ、汲み取り式の厠やプレハブのガレージなど 、敷 地内には年代も構造もばらばらに建ち並んでいた 。施 主の願いは 、これまでの場当たり的な増改築の結果を 一掃し、引退した先代や将来の農家後継者の為にも 、 三世帯が距離を取りながらもコンパクトに同居できる 家だった。
施主と、既に引退している先代のご両親 、後継者とし ての子世帯の三世帯計6人が付かず離れず同居するた め、二層分重ねた通り土間を緩衝帯として両脇に各世 帯の為の諸室を配置した 。通り土間の南北端に玄関を 設けることで南玄関で来客があっても北玄関を使えた り、途中に引き戸を設けて一時的に仕切って使える 。 また農家としての性質上近所の方の訪問が多いことか ら、南北の道路から見えにくい東西面に大きく開口を 設けたり、高い位置に水平連窓を設けるなど 、地上階 は比較的閉じた印象でありつつも開放的な居室となっ ている。通り土間を挟んで片側に親世帯の為の居間(L DK1)、対岸には地域の寄合も開くこともできる全世 帯の為の広い居間(LDK2)を配置した 。
二階は地上階からセットバックさせ 、小世帯の居間(L DK3)と個室が通り土間を挟んで向かい合い 、屋外と の距離を調整できるよう出窓を設けてプライバシーを 確保している 。平屋建ての母屋に倣って寄棟屋根とし 、地上階の下屋屋根があることと 、出窓の出幅の違い に合わせて弓形に軒を伸ばすことで 、二層でありなが ら長手に軒樋を設けていない 。
母屋を耐震補強して使い続けることも提案したが施主 の思いは強く 、むしろ家族と地域のこれからの姿を指 し示す機会になると考え依頼を受けた 。 歴史ある母屋や米蔵を解体するのには心が痛むが 、都 市型新宅と伝統的外観の付属舎が同一敷地内に建ち並 ぶ屋敷景観の乱れに 対し、母屋・離れ・隠居・閑居・ 蔵などを敷地内に建て増していくこれまでの農家の建 物配置から 、それら全てを含んだコンパクトな単一建 物への居住のあり方は 、農村住宅地の新しい風景に繋 がると期待している 。
建物が完成し室内にいると、大きな窓から庭を介して屋外の様子が伺え、小屋裏の窓からは遠く柏の葉キャンパスや近隣の森が見渡せる。菜園やぶどう棚がある庭は、道路と遊歩道の間を繋ぐ公園のように開かれた空間に感じられるようになった。30年前の宅地整備による建物や街並が現代の多様な住まい方によって変化していく今、その変化を受け入れながら住み方を選択でき、積極的に家を使い続けられる住宅のあり方が、これからの郊外の住宅地を修景していくことに繋がると感じている。